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砂漠化

2015/04/21 5:20 に 山口文夫 が投稿

                                 元 茨城学習センター 所長 塩見 正衞

砂漠化とは

 砂漠化は,「乾燥,半乾燥および乾性半湿潤地域における気候変動および人間活動を含むさまざまな要因によって引き起こされる土地の荒廃」と,1994年,国連で採択された「砂漠化対処条約」に定義されている.この条約では,乾燥地域を乾燥指数 (=年間降水量/年間蒸発散量) によって,表1のように分類していて,極乾燥地をのぞいた乾燥指数0.05~0.65の地域 (以下,乾燥・半乾燥地域と書く) を砂漠化問題の対象地域としている.砂漠化が進行している地域は,世界の各地にみられるが,特に大面積で進行しているのは,降水量の少ないサヘル地域,アラビア半島から中東地域,中国北部から西部にかけてである(1).砂漠は単に砂に覆われた土地を意味するのではなく,礫や岩石,粘土などに覆われた土地,塩類が集積した土地で,ある場合は,降水量が多くても土壌が荒廃し貧弱な植生で成立している土地を意味している.

1 乾燥地の呼称と分類;乾燥指数=(年間降水量)/(年間蒸発散量)

乾燥指数

0~0.05

0.05~0.2

0.2~0.5

0.5~0.65

呼 称

極乾燥地域

乾燥地域

半乾燥地域

乾性半湿潤地域

陸地面積%

7.5

12.1

17.7

9.9

小泉ほか(2000)

 


砂漠化の原因と対策

 砂漠化は,気候的な要因と人為的な要因およびその相互作用によって引き起こっている.気候的な要因による砂漠化は,大気循環や気団の発生など地球上の各地域で起こるさまざまな長期的・短期的な湿潤期と乾燥期,高温期と冷温期などの変動によって起こる.

人為的な砂漠化は,乾燥・半乾燥地域における人口増加,経済活動を優先した気候条件に不適合な農業・牧畜業の近代化が原因になってもたらされている.砂漠化が進行している土地は,全球的にみで36haにも及び,そのうち93%は放牧地,6%は降水依存の農地で,灌漑している農地は1%である.すなわち,砂漠化の影響下にある土地のほとんどは牧畜業や農業に使われている土地であるといえる.特に牧草地(自然草地)は広大な面積を有するので,先ず牧草地を取り上げる.牧草地においては,1970年代・1980年代以降,世界的に牧民の旺盛な経済活動や人口増加に対応して,面積当り放牧家畜頭数を増加させ,利益拡大を図ってきている.家畜頭数の過度な増加は,生育している植物のバイオマスの再生を抑え,植生の変化をもたらす.家畜の種類によって異なるが,家畜の好む植物種は減少し,有毒植物,とげ植物,不嗜好性植物種が増加する.また,強い放牧によって牧草地の土壌も大きな影響を受ける.地上部バイオマスが減少した表土では植物遺体が減少し,踏み固められた表土からの水分の蒸発が激しくなり,ついには,表土(A層)を喪失した裸地が斑点状に現れ,さらに裸地の占める面積は拡大していく.地下水位が高い(地表から1 m程度)土地では,蒸発量と降水量の不均衡により,土壌表面に塩類が集積し,元の土壌と植生へ回復させるのが非常に困難になる(2-1).土壌が決定的な損傷を受けていない場合でも,植生の回復には数年から20年くらいを要し,その期間は主に年降水量に依存していると考えられている.また,乾燥地でも稀に生じる多量の降水は,土壌の流失をもたらす.そこでは,等高線状にわら束を並べて,土壌の流失を防止する研究が行われている(図2-2).

1980年以降になると乾燥地・半乾燥地における牧草地の開墾が進み,高収入が得られる換金作物,トウモロコシ,ナタネ,穀類などの栽培が行われるようになった.このような栽培農業では,降水量などの気象条件がいい季節には高い収量が得られるが,干ばつ年や乾燥する季節には,表土を覆う植生が存在しない土地では激しい風食にさらされる.数年をまたずして土壌有機物を含んだ表土は喪失し,裸地化する.砂漠化を防ぐには,牧草地として維持することが重要である.一旦,耕地化された土地には,風衝(石垣や生け垣)などで囲むと,風食のレベルをある程度落とすことができる.

日本の童謡に出てくるような砂丘を形成している砂漠は,サハラ砂漠や中東,中国,オーストラリアなど5大陸のいずれにも見ることができる.その多くは,植物の生育が困難な流動砂漠であるが,過去長い期間かかって砂丘の表面が植物に覆われ,固定されている潜在的な砂漠も広い面積を有する.中国では,このような砂漠を砂地と呼んでいる.砂地では,砂丘表面の植生の破壊によって容易に流動砂漠に戻ってしまう.砂地の流動化を防ぐためには,過酷な土地利用を抑制することが第一である.流動化の兆候が見られる初期

には,流動化を防止するためのさまざまな技術が開発・利用されている.たとえば,中国では,わらを太さ20 cmくらいの棒状に束ね,1 mごとに区切って碁盤の目状に配置 (草方格) したり(図2-3),乾燥に強く長い根茎をもつ植物を移植・植林する方法などが実用化している.

植生の荒廃は,多雨・湿潤な地域でも起こっている.かって豊富な木材を生産していた森林でも,大量の伐採後に土壌が流失したところでは,とげの多い灌木類と背の高いイネ科植物に覆われ,高木からなる原植生のへの回復は長期間不可能で,植林も有効な手段とならない.このような荒廃は,中国の降水量の多い亜熱帯山岳地帯の広大な地域でみられる(図2-4).

近年,地球規模における気候変動(高温化と激しい気象変化)が乾燥・半乾燥地域の牧畜や農業生産に大きな影響を及ぼし始めているという研究発表が多い.このような現象の確証を得ることは容易ではないが,中国内蒙古自治区では過去50年間に2度以上の年平均気温の上昇が起きているという報告がある.この上昇は,中国全体の年間気温上昇0.5~1.1よりも極めて高い値であり,牧草の生産量や植生に何らかの影響を与えていると考えられる.                             



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