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青海-チベット高地の草原調査2     塩見 正衛

2011/05/15 8:28 に 山口文夫 が投稿   [ 2011/05/15 8:32 に更新しました ]

以前1987年にここ来た時には標高4000m超の峠を越えました。その時、随行してくれた宋承漢さんは、「ここは富士山より高いのですよ」と自慢げに言ったのを思い出します。2001年には3800mのところに大坂山隧道ができていて、そこを通りました。峠から眺めたこれから行く下界は600mほど低い海北盆地で、周りは45000mの山に囲まれていました。一面に緑の絨毯を敷いたような美しい草原です。

到着して2日目ごろから、宿舎の近くの草原に場所をきめて調査を始めました。植物の種類が非常に多く、また日本の植物とは異なっているので、予定どおりに仕事が進行しません。つづく2002年と2003年の調査では、もう少し能率のいい調査に方針を変えました。100cm2の小さな100個の区画で、区画ごとに植物を地際で切り取って種類ごとに分類し、乾燥させてから重量を量りました。そのような作業をしながら、この草地の植物種類数がびっくりするほど多いことに気が付きました。何百ものデータから計算した平均は100cm2当り約20種類もあって、最も多い区画では30種類にも達しました。世界一の種数を見つけたのではないかと、その頃からわくわくしていました。

日本に帰ってから早速栃木県の自然草原に行って、海北草原とまったく同じ方法で調査しました。そうすると、100cm2当たり平均で45種類しかありません。最も多いところでも10種類くらいです。その後、茨城大学構内の雑草畑で、同じような調査を行いましたが、ここでも4~5種類でした。それから、このような小面積当たりの種数を扱った研究事例を片っ端から調べてみました。その結果、バルティック海の海岸や島嶼の石灰質貧栄養草地で、100cm2当たり約17種類を記録した例が見つかりましたが、やはり私たちの調査結果の方が高い値でした。

このような研究は何の役にもたたないと思われる方もいるでしょう。私たちは世界一の種類数の発見に満足もしていますが、それだけではありません。研究の目的は、このように狭い面積で、20種類もの植物がどのようにして光や空間、水や栄養を分け合っているのかを明らかにすることです。このことによって、草原が種の多様性を維持しているメカニズムが明らかになってきます。種類数については2008年に英文の生態学誌に掲載されました。

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