話題・課題‎ > ‎

放射線量と統計調査       塩見正衛

2011/04/30 16:54 に 山口文夫 が投稿

311日午後、東北から北関東の太平洋側近海でM9の大地震が起きました。直後に岩手県から千葉県までの海岸は大津波に襲われ、コンクリート以外の建物は壊滅し、人々が住んでいた町も村も廃墟となりました。同時に、福島県の海岸で稼働中の東京電力の原子力発電所が津波を受け、原子炉冷却水の循環装置を含むほとんどすべての安全装置が機能しなくなってしまいました。それから数日の間に、何回も爆発や火災を繰返し、ヨウ素とセシウムなどの放射性同位元素が空気中に放出され、現在では北半球のどこでも検知できるくらいに広がっています。

内閣官房長官は毎日記者会見を行って、震災地と原子力発電事故の状況と対策についての政府の決定を報告しています。その中では必ず、大気や土壌、作物や牛乳に含まれている放射性同位元素による線量の報告がありますが、その測定方法については全く触れられていません。事故後初期の段階では、多数のサンプル調査から得られた報告とは考えにくい状態だったと思います。対象となる地域でメッシュ状に測定されたのか、たまたまある1地点で得られた値なのか。測定方法や測定地点数によって、発表されている数値の信慿性は全く異なってきます。その後、高濃度の放射性物質が海洋に漏出したり、低濃度とは言え冷却水が大量に海に放出されるような事件まで起こりました。ここでも、海洋中の放射性元素の濃度や線量、あるいは海洋生物に含まれる放射性元素の濃度を測定するために、どのようなサンプリングが行われているかについては何も語られませんでした。

統計学では「どのような方法で何個のサンプルをとったか」は常に結果の信憑性の基礎になります。つまりサンプルは公平かつ誤差を小さくするように取られなければならないのです。放射性同位元素の濃度の地理的分布図もサンプルの取り方に強く依存します。サンプルの取り方についての報告がなければ、私には発表に信用をおいていいかどうか分からないのです。新聞記者も視聴者も統計学の知識を持ち合わせている人はごく限られていると思います。故意ではなくても統計学で欺かれることは往々にして起こっているのですから、敢てこのことを言いたいと思い、筆をとりました。

Comments