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草地学の研究50年(1):草地が作る生態系  塩見 正衛

2010/11/29 1:24 に 山口文夫 が投稿   [ 2010/12/03 15:01 に更新しました ]
私は1961年4月、23歳で就職して以来、東京都北区に所在した農林省の農業技術研究所(当時)で、農業実験の方法や実験データの解析方法についての統計学の勉強や研究をしていました。40歳になった1978年、それまでの研究室内での研究から、牧場など野外での研究が主体である草地試験場に転勤しました。野外での研究や労働は体力がいりますが、とても気持ちのいいものだったし、牧場の草や放牧牛を扱うのは大変愉快な仕事でした。

草地に降り注ぐ太陽の光を利用して植物が成長し、それを食べて牛が育つ。枯葉や牛の排泄物は土に生息しているミミズやゴカイなどの小動物、土壌線虫やバクテリアなどの微生物が分解する。そのような草地生態系で働いているプロセスを時々刻々と予測し、生産量を最適化するために生態系を数式化するというのが私のいた研究室に与えられていた課題でした(システム研究といいます)。このテーマは私には大変興味深いものだったし、またそれまで行ってきた統計学や数学の知識を生かすいい場面でした。

この研究は、専門が異なった10人くらいの研究員の共同研究として15年ほどつづきました。太陽の光がどれくらい降ってくるか;その光を牧草はどれくらい固定・利用しているか;どれくらいの牧草量を放牧牛は食べているか;土の中では窒素がどれくらい固定されてているか;枯葉や排泄物の分解速度はどれくらいかなどを専門ごとに明らかにする実験や調査を行いました。、得られたデータは、解析してその数値を生態系モデルに組込んでいきます。私の主な任務は、定期的に牧草を刈取ってその季節変化を調べることと、モデルを作ることでした。コンピュータの中に牧場を作るようなものです。まだ初歩的なモデルでしたが、研究を開始してから4年後の1982年に、そのシミュレーション結果を論文で発表しました。現在は、このようなモデル研究を内蒙古の草原で行っていますが、そのことについては、また後日お話できればと考えています。

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