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エストニアの草原で      元茨城学習センター所長 塩見正衛

2013/09/03 7:31 に 山口文夫 が投稿   [ 2013/09/03 8:07 に更新しました ]
 私たちが中国青海省の高地で得た、非常に高い小面積当たり植物種類数の記録に匹敵する高い種類数を記録しているのが、スウェーデンのエーランド島の海岸とエストニアのアルバー草地や森林化している草地である。2013年6月に、エストニアのタルトウで国際植生会議が開かれることになって、会議の前にアルバー草地や森林化している草地を訪問する見学旅行の予定が発表になった。私はこのチャンスを逃がすと、
もうその草地を見る機会を失すると思い、大分前から
見学旅行に参加することを心に決めていた。
首都タリンで、50人余りの植物学者がバスに乗り、それから1週間エストニア西部の森林や草原、それに湿原と、沢山の植生を見学した。タルトウ大学生物学研究室で準備しているパンフレットによると、「アルバー草地や森林化している草地では、小面積当たり植物の種類数は、世界最高である」と書いてある。また、私たちのバスに添乗したタルトウ大学の植物学者アベリナさんも、「これが世界記録です」と説明した。旅行の最終日、突然、種類数の研究の中心になっている、また今回の会議の会長でもあるゾーベル教授がバスに乗り込んできて、「この草地の小面積当たり種類数は世界記録です」と説明した。私はこのような話を聞くたびに、「いや、世界記録は私たちの調査です」と心の中で呟やかなければかなければならなかった。なぜなら、私たちが青海省の高山で得たデータでは、100個の10cm×10cmの枠内に存在した種類数が、実に、平均19.7であったからである。平均19.7はゾーベル教授たちの種類数よりも3種類くらいは高い数である。このことは、やはりエストニアの先生方に伝えておきたいと思い、アベリナさんにもゾーベルさんにもお話しした。また、会議での発表でもそのことを示した。
私が、この見学旅行中最も興奮したのは、バスが森林化している草地に着いた時、アベリナさんの提案で、「20cm×20cmの金属の枠を使って、その中に何種類の植物が見つけられるか、調査してみよう」ということになったときである。私は、一緒に来ている家内と一緒に、ナイフで枠の中の植物を全部刈取り、シートの上に種類別に並べて種類数をかぞえた。私たちには見慣れない植物が多数あったので、この作業にはとても時間がかかった。アベリナさんに来てもらって、分類を手伝ってもらった結果、27種類であった。この草地では特にイネ科の植物の種類が多いように感じた。これは、もちろんただ1個の枠の調査だし、枠の大きさも異なっているので、私たちが過去に青海省で行った調査結果と比較することはできない。とにかく、旅行中にこのような模擬調査を入れていただいたことに、ひどく感激した。記念にその時使った鉄枠をいただいて、日本に持ち帰ることにした。
会議最終日の晩餐会の終わりに、私はエストニアの人たちと握手をしながら、「もし皆さんが、青海省で調査をされることがあれば、私たちももう一度青海省に行って、一緒に調査をしたい」と伝えた。現時点では世界一種類数の多い青海省の草地で、中国の人も交えて調査できる機会があることを楽しみに待つことにしよう。(8/26/13)

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