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脳波で動くロボット    茨城学習センター長 白石昌武

2011/10/04 20:24 に 山口文夫 が投稿   [ 2011/10/06 5:30 に更新しました ]
 自分が怒りを感じた時、心地よく感じた時、あるいは不快に思った時、一体どんなしぐさになるんだろうか? そのような感情状態にある自分を何らかの形で表現できないか、つまり形として写像できないか、と言う夢を抱いて始めたのが本研究である。そしてその最終目的は、例えば怒りを感じているときの写像をロボットが汲み取り、そのフィードバックとして癒しや心地よさなどを形として本人に返してくれるヒューマンフレンドリーな対話型ロボットを目指すことにある。
人が心地よく感じたり癒される状態にあるときの脳波は一般にα波(8~13 Hz)となり、その周波数スペクトルとして、パワーが周波数f に反比例する1/f ゆらぎとなる。そこで具体的に脳波信号を用い多関節型ロボットのマニピュレータを操作するため、人に快、不快の聴覚刺激を与えた場合の脳波信号の α波に注目し、その解析および制御信号創成のため定量化を行ってマニピュレータを動作させた。その動きについて、他のゆらぎ信号入力との比較のため以下の評価項目を設定した。
1) 白色ゆらぎ(不規則ノイズ):マニュピュレータの動きがランダムとなり,どちらかと言えば視覚的に唐突感や不安感を与える動作
2) 1/ f ゆらぎ:マニュピュレータの動きとして新鮮さを含む変動を伴いながら,何か期待感を抱かせるような動作(人に癒しを与えるとされるゆらぎ信号)
3) 1/ f ^2(f の2乗) ゆらぎ:変動の相関が強くなり,むしろ期待通りあるいは繰り返しの強いマニュピュレータの動きとなって,視覚的に退屈を感じさせるような動作

聴覚刺激音については、その変調幅および強弱にゆらぎの特徴が現れることから、1/ fゆらぎの音圧 [dB] で作曲されている音楽をあらかじめ選定し、それを被験者の好む音量で聞いている場合を快適感の入力とした(図1)。
 一方不快な刺激音としては正規乱数列を時系列の音圧に変換し、被験者の耐えられる最大の音量で聞いている場合とした。脳波測定は、精神的感情と思考を司る前頭葉、知覚と認識それに思考などの高次の働きを司る頭頂葉、そして音楽認知の機能があるとされる側頭葉の3点で行った。マニピュレータ動作制御のパラメータは、実時間で各関節に脳波からの信号を角度位置として入力する。そのために、ゆらぎ特性をそれぞれの関節において動作可能な電圧に変換した。被験者20名に対してマニピュレータの動きをいかに捉えたかについて、アンケート調査を行った。その結果、快適な音刺激を与えた場合の動作、つまり1/ f ゆらぎ入力に対するマニピュレータの動きでは,“弛緩”と“眠くなる”の評価が得られ、不快な聴覚刺激の場合は“機械的”という評価が得られた。このように心地よい音刺激により操作されたマニピュレータの動作は,視覚的に人をリラックスさせる優しい動きであることが判明した(図2ではマニピュレータに鯉のぼりを装着して、その滑らかな泳ぎを確かめた)。

 
 
    図1 被験者からのα波の抽出    図2 α波で動く鯉のぼり

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