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エジナの草原3:研究結果の概略    前茨城学習センタ長 塩見 正衛

2012/03/21 22:51 に 山口文夫 が投稿   [ 2012/03/21 22:55 に更新しました ]
 昨年夏、植生調査に行ったゴビ砂漠南部に位置するオアシス草原エジナの話は、もっといろいろのことを書くつもりにしていたのですが、「書きかけては中止」を繰り返して、とうとう中止してしまいました。今年3月に大津の近く、瀬田の龍谷大学で、日本生態学会が開かれます。私くらいの年齢の人は発表する人はほとんどいないのですが、私はせっかく参加するのだから、(何の役にも立たなくても)何か情報を発信しておこうと思い、毎年短い報告をしております。今年は、「南部ゴビ砂漠(額済納:エジナ)のオアシスにおける植生とその空間的特性」という題名の話題提供をします。
エジナには、青海省北部の5000 mを越える高山、祁連山脈を源とする黒河が流れています。流れているといっても、現在は、途中で農業や工業、都市での利用によって、水量は極めて減っているようです。また、年間降水量は50 mm以下です。沢山の途切れた支流や、伏流水からの沸水によってできた河や沼地、そして干上がった広大な乾燥地が存在します。私たちは、黒河の支流と考えられる幅20 mくらいのたまり水の河岸で調査を行いました。河の岸辺だけは土壌中の水が豊富なため、イネ科やスゲ属の植物がびっしり生えた植生で、植物量は豊富(m2当たり生で400~500 gくらい)です。ここの土壌の含んでいる水の容積量は25%で、塩集積レベルは電気伝導度で測って2.5 Sm-1くらいでした。一般に、0.3 Sm-1を超える土壌は、塩集積土壌と呼ばれています(ちなみに、ここの河の電気伝導度は1.2 Sm-1でしたから、この途切れた河でも塩集積が起こっています)。河岸から20 mくらい離れると、電気伝導度は5 Sm-1程度に上昇して、植物量は350 g m-2になります。、100 mも離れると、土壌の電気伝導度はさらに高くなって10 S-1m以上に、そして植物量は150 g m-2程度にまで減ってしまいます。河から離れた乾燥が激しく(土壌水分は1%以下)、植物量が少ない所では、背丈の低い甘草(カンゾウ;わが国でも漢方薬に使われています)がところどころに生えている程度です。しかし、グーグルの地図によると、(大雨か洪水で)過去に流水か帯水があったと考えられる地点では、乾燥は激し (土壌の水分量<1%)くても、土壌の電気伝導度は相対的に低い値(2 Sm-1レベル)を示しています。
 以上のことから次のような事柄が言え、発表の骨子になると考えています:
(1) 河岸にごく近くの土壌水分が豊富な地点では、塩集積レベルは比較的低く、植生は豊かである;
(2) 河岸から多少離れていて土壌水分がやや低い土壌の地点でも、塩集積はさほど高くなく、比較的豊富な植生を形成する;
(3) 河岸から遠く離れていて、過去に流水か帯水がたびたびあったと考えられるけれども普段は強く乾燥している地点の塩集積レベルは高い。しかし、乾燥土壌のため植生は非常に貧弱である;
(4) 河岸から遠く離れていて、流水や帯水が決して起こらない乾燥の激しい地点では、土壌の塩集積レベルは非常に高く、植生は最も貧弱である。
一度だけの調査旅行では、理解できないところがたくさん残っています。また機会があったら、そのような問題点を解決するために、調査隊を組みたいものです。
調査地の衛星写真(説明):Y–1, Y–2, Y–3, Y–4の赤のラインは河と平行に, T–1, T–2は河と直角にとった調査用のラインの位置。縦の黒色の帯は河(電気伝導度EC>1);濃い灰色はたびたび流水が見られたと想像できる地帯の草本植物群集(EC: 2~5);灰白色で黒い点々(植物体)の散らばる地帯は以前に流水か帯水があったと考えられる強い乾燥土壌(EC>5);灰白色で黒い点々のない場所はかっては流水があったかもしれないけれども、現在は強く乾燥していて、植物がみられない土壌(EC>5)(Googleから) 



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