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エネルギー開発と地球温暖化について    元 茨城学習センター所長 奥 達雄

2015/02/01 4:44 に 山口文夫 が投稿
東日本大震災前後の変化

2011年の東日本大震災前後でエネルギー供給の事情が大きく変わった。原発に30%近くの電気を頼っていたのが、原発事故以後次々に国内の原発が停止し、ついに20139月にはゼロになった。2014年末の時点では、約30%の電力の不足分は主に石油、天然ガス等で火力発電により補填されている。1995年頃から日本のエネルギー総消費量は横ばいになっており、2006年以降やや低下している状況である。しかし、2030年までエネルギー需要は増加の傾向にあるという予測なので、エネルギー消費量も増加してくる可能性がある。

 日本の消費エネルギーと電力量

 日本の電源の構成は資源エネルギー庁のエネルギー白書によると2013年度の総消費エネルギーは2010年度より約5%減少し、3.952x1012 kWhであり、その23.3%が電力量である。2010年度は総電力量の62%が化石燃料によるものであり、震災後の2013年度は88%が化石燃料(石油、石炭、天然ガス)によるものとなっている。現在は主に石油と天然ガスの輸入増加によって賄われている。また総供給エネルギーの90%以上を化石燃料に依存している状況である。

 

温室効果ガスの排出量

 エネルギー起源の温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出量は2013年度の場合1,224Mtとなっており、これは全温室効果ガス排出量の約90%である。これは2010年度に比べると8.5%の増加である。このことからエネルギー起源の燃料が温暖化ガス排出の大きな原因になっているとみることができよう。もちろん温室効果ガスを排出するのはエネルギー起源以外のもの(廃棄物・工業プロセス及び製品の使用など)も10%程度あるので、これらを減らす努力も怠ってはいけない。しかし、まずは大部分を占めるエネルギー起源の化石燃料の使用を減らす工夫が必要であろう。

 

温室効果ガス排出の影響

 温室効果ガスのもたらす影響は最近マスコミでも詳しく報道されているのでよく知られている話であるが、特に影響の大きなものは温暖化により海水の温度が上昇し、陸地が失われ、人間の居住地が水没していくことである。もう一つは大きな気候変動による世界各地での天候異変による自然災害の増加であろう。現在、世界中でいろいろな対策を考え、実施しているところだが、現状を少しでも良い方向へ変えていくことは大変困難な状況である。

 

影響の具体例

 影響予測の具体例を挙げてみよう。温室効果ガス(二酸化炭素)の放出の影響については、IPCC第4次評価報告書によると、およそ次のように考えられている。1990年から2000年の間に二酸化炭素は約350ppmから370ppmへ約20ppm増加している。2100年における二酸化炭素についてはいろいろな研究を総合すると450ppmから910ppmに増加するのではないかといわれている。この場合1990年から2100年までに地上の温度が1.4から5.8℃上昇するという。その結果、海面の上昇が生じる。環境白書によると、1990年より二酸化炭素の排出量を40%減少できると仮定して、気温上昇が2100年において1.52.5℃になる。その結果、海面の上昇が1595cm見込まれるという。これを日本の場合について考えると、海面の上昇が30100cmになると、現在の砂浜の3790%が消失するという。その際、満潮位以下の場所に現在約200万人が住んでいるとのことである。世界中いたるところで類似のことが起こると考えられる。すなわち、将来、地球温暖化は人間の居住財産等の存在を脅かす原因になることが予想される。

 温室効果ガス排出を軽減する方法(1) 

  温暖化を軽減するにはどうすればよいか。それははっきりしている。温室効果ガスの排出を減らす努力をするのが最も有効である。もう一つは排出された二酸化炭素を大気中へ出さず、生物を利用するかあるいは化学的に処理する方法により、固定化する技術である。これは今後期待できる温暖化ガス軽減技術の一つであると思う。世界規模でみれば、大気中の二酸化炭素を減らすのに温室効果ガスの全排出量の約80%がエネルギー起源のものであることを考えると、エネルギー起源の温室効果ガスの排出を減らすことを考えるのが最も効果的ではないだろうか。2013年度の日本の温室効果ガス(二酸化炭素換算)の総排出量が約139500万トンあり、その約88%がエネルギー起源によるものであるという。2012年以降エネルギー起源の排出量は増加しているが、これは2011年の東日本大震災後原子力発電を停止したこと等によるものであると推察される。

 温室効果ガスを軽減する方法(2

  世界の二酸化炭素排出量は2012年のデータでは317億トンである。地球規模では日本の温暖化ガス排出量(3.9%)はそれほど大きくない。温暖化ガス排出を減らすには、現在最も多量の温室効果ガスを排出している中国(26%)をはじめ米国(16%)、EU28か国(11%)、インド(6.2%)などの積極的な協力なしには不可能であることは明らかである。日本としては、それでも様々な節電技術の開発と非化石エネルギー源、すなわち再生可能(太陽、地熱、風力、バイオマスなど)・水力・原子力などの開発の促進は重要な選択肢の一つになると思う。その中でも筆者が長年関わってきた高温ヘリウムガス冷却炉は高い安全性が最近話題になっている。選択肢の一つとして今後利用を検討する価値があると思っている。しかし、利用を検討する前に、現在日本が所有するHTTR(大洗にあるJAEAの高温工学試験研究炉)を用いて実験的に安全性を確認し、その結果を国民に示すことが前提である。

 

非化石エネルギー源(高温ガス冷却炉など)の開発促進

  国の「エネルギー基本計画」(2014411日閣議決定)によると、まず再生可能エネルギーは重要な低炭素国産エネルギー源として位置付けている。次に、原子力は運転時に温室効果ガスの排出がないことが一つの特徴であり、そのため、これを安全性の確保を大前提に重要なベースロード電源として位置付けている。原子炉の中心部に大量の黒鉛材料と炉心の冷却に不活性のヘリウムガスを利用している高温ガス冷却炉は、現在運転可能なものが日本と中国にしかない。750-950℃の高温で運転するため、高温での熱利用による水素製造等及び発電の両方が可能である。ガスタービンによる直接発電も検討されている。現在の化石燃料を用いる火力発電による電力利用を他の再生可能エネルギーによる発電や安全性の確認を終えた原子力発電等を利用していかないと大量の温暖化ガスを排出している国の排出量の低減はかなり困難であるように思う。高温ガス炉に関する日本の技術力は高いが、今後これを維持し、これを高温工学利用技術として内外の産業界で利用展開されることを期待している。近隣の東アジアの国では多くの高温ガス炉を作り、増加するエネルギー需要と温暖化ガス排出の軽減と両方の目的を達成しようとしている。

 むすび

 現状では、再生可能エネルギー源(太陽・地熱・風力エネルギーほか)の利用の拡大も望まれるところだが、これは大電力の供給には不向きである。安定供給性に不安があることはよく知られている。要はその用途・地域などに適したエネルギー源の選択が大事ではないかと思う。地球上のエネルギー源は何であれ大事に使っていかないと未来の子孫に対して不安の種を残すことになる。原子力エネルギーも人間が開発した大事なエネルギー源であり、場所を選んで安全性のより高いものを開発して利用すべきものと考える。放射能、放射線は地球・宇宙の内蔵するエネルギー源の一つであるとともに、医学上、病気の検査・治療に役立っており、人間にとって有用な存在となっている。

 人間の生み出した文明の利器あるいは発見したものは、功罪がありいいことばかりではない。原発や放射線・放射能もその一つである。利点をうまく利用し、欠点を減らす工夫をするのが人間の知恵というものではないか。要するにいろいろなエネルギー源を適切に組み合わせて利用していき、温暖化ガスの排出を最小にするように地球上の人間ができる限り努力し、将来の人間の持続性に対する不安を解消するようにしたいものである。

 

(参考文献及び資料)

*文部科学省HP

*産業経済省資源エネルギー庁HP:エネルギー白書

*環境省HP:環境白書

*日本原子力研究開発機構(JAEAHP

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