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農薬耐性をもった雑草の進化     塩見 正衛

2011/10/06 1:59 に 山口文夫 が投稿   [ 2011/10/06 5:31 に更新しました ]

「人口は等比級数的に増加するが、食糧の生産量は等差級数的にしか増加しないから食糧危機が来る」という予言は、19世紀末からはじまった農業革命によって現時点では克服されたかに見える。この農業革命を支えたのは、工業的に生産された肥料、農薬、農業機械とこれらの条件にマッチする品種改良である。

ここでは、農薬を取り上げる。農薬は作物の害虫や病気を防除し、耕地に発生する雑草を殺す。作物は光合成によって炭水化物の生産を行い、成長や子孫を残すための遺伝物質を作っていく。光合成のプロセスには多くの種類の酵素が絡んでいて、必要な酵素が1種類でも欠けるると、植物は枯死せざるを得なくなる。現在の優秀な農薬は、ある酵素だけを狙って活性を阻害するような機作のものが多い。

さて、農薬を使うと、その農薬に耐性のない遺伝子をもっている雑草個体は死んでしまい、そのうち集団から淘汰されてしまう。しかし全部の個体が耐性をもっていないわけではない。わずかではあっても、耐性のある遺伝子をもっている個体があると、その個体はその農薬では死なずに種子を残す。耐性のない個体は農薬で全滅させられる一方、耐性個体はらくらく成長して世代ごとにますます多くの子孫を残すから、繁栄する。まさにこの雑草にとっての進化である。こうして、この農薬環境の変化に最も適応できる遺伝子をもっている個体の集団ができあがる。人間の方は、また大慌てで新しい農薬を開発して、進化してきた雑草を防除しなくてはならない。人類と雑草は、このようにして永久におり合うことがなく、農薬開発と進化を繰り返している。

農薬産業の多国籍企業モンサント社では、トウモロコシにある除草剤に耐性をもった遺伝子を組込んで栽培し、農薬をまいて雑草だけ枯らす技術を開発した。この技術にみんなは驚嘆の声をあげた。しかしながら、このような農薬に対しても対抗できる遺伝子をもった雑草個体がわずかでも存在しているなら、その遺伝子をもった雑草が世代を追うに従って多くなっていく。このようにして、農薬産業は新たな農薬と農薬耐性をもつ組換えトウモロコシを永久に開発しつづけなくてはならない。

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