話題・課題‎ > ‎

額済納(エジナ)の草原2    塩見 正衛

2011/10/06 4:02 に 山口文夫 が投稿

額済納に到着して2日目の仕事は、私たちが理想的と考えている調査地を探すことである。理想的な場所は、川か沼があり、岸から離れるにしたがって乾燥が強くなって、植物相が次第に変化しているような所である。私たちの世話をしてくれることになっている草原站の丁耀明さんの頭の中には、すでに候補地がいくつかあるらしい。

砂漠は、津軽海峡とほぼ同緯度であるが、日中の暑さは相当なものらしい。当地の人は、40度を超すといっている。ちなみに、額済納の役所は、夏は12時から午後4時までは昼休みということだ。私たちも、できるだけ酷暑を避けるために、丁さんの忠告に従って朝早く出発することにした。6時半にホテルを出、途中朝食を取ってから、ペットボトルの水を1パッケージ積み込んで草原に向かう。ちなみに、私たちが借りた自動車はランクル2台で、1台は丁さんが運転、もう1台は丁さんが雇った寺日格図さんが運転する。まもなく狭くて浅い川に着いた。すでに流れは止まって池のようになっている。川の両岸には10cmくらいの菅が生えていて、岸から5mも離れるとイネ科の密な植生になる。そのあたりは、一面12cmの厚さに結晶した塩が土壌表面を覆っている。さらに河岸から30mくらい離れると植物はまばらになり、木本マメ科の甘草が生えている。川から少し離れると、夏にはもう川の水の恩恵をこうむることはないと思われる。

3番目に見に行ったところで、初めてみるオアシスとその周辺の植物相の変化に、私はとても興奮していた。湿地を歩きまわって調査に適当かどうかを調べているうちに、表面は乾いているけれども、その下は泥濘なアシ草原の泥に踏み込んでしまった。左足が泥にはまって抜けなくなり、あわてて強く踏みつけた右足も泥の中にめり込んでしまった。足は30cmくらいは泥にもぐっていたと思う。左足を力を入れてやっと泥から抜くと、足だけ抜けて靴はそのまま泥の中に残ってしまった。その靴を手でつかみ出そうと右足に力を入れると、右足はもっと深くめり込んでしまう。尻もちをつきそうになる。子供のころに読んだ漫画の底なし沼が頭をよぎった。こんなところで転んだら、ひとりで這い上がることができない。他の人たちもきっと巻き添えにしてしまうに違いない。私は、思考停止状態になってしまった。

それでも、泥にとられた靴をやっと回収、今度は泥にめり込まないように右足と左足をできるだけ速く動かして、土の固いところまで脱出した。丁さんが、近くにある小さな水たまりに連れて行ってくれたので、みんなに手伝ってもらって靴と足を洗った。ズボンも裾がず

(写真4) 塩のたまっている草地の地表面

ずいぶん汚れたが、洗わずに我慢することにした。ホテルには着替えのズボンも持ってきていたけれども、翌日も着替えずにそのままで作業をした。ズボンについた泥は湿っているときは真っ黒であったが、乾いてから見ると陶土のように真っ白であった。調査に入る前からこの失態である。以後乾いて見える泥には注意すること!戒めである。

それから、私たちは、丁さんの知り合いの農家で昼ごはんをごちそうになった。大きな山羊牧場を夫婦2人で維持している。私たちが予想していたうどんの昼食とは違って、40度の酒と鍋一杯の羊の蒸し肉が出た。中国の田舎では、酒を断るのは失礼だ言われているので、注がれた酒を覚悟を決めて何倍も飲んだ。もう午後の仕事はできそうにない。茨城大学の同僚も、陳さんも、学生達もみんな儀礼に従って酒を注いだり乾杯の音頭をとったりした。

帰途、最初に見た川傍の草原にもう一度立ち寄って、翌日からの調査地をそこに決めた。

 
 
 写真3 額済納の街 写真4 塩のたまっている草地の地表面



Comments