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ある発見:植物の集まりにはどのような法則があるか  元茨城学習センター所長 塩見正衛

2013/09/03 7:34 に 山口文夫 が投稿   [ 2013/09/05 18:00 に更新しました ]
いつからだったかは正確には思い出せないけれども、10年以上も前から、ある一つのことを考えていた。草原で種類数を調査するとき、私たちは、ライン上に10cm四方の金属枠を100個置いて、枠ごとの種類数をかぞえている。そのとき、枠の中に見つかる植物の種類数はさまざまである。ある枠では5種類だったり、その隣の枠では8種類だったりである。荒れて、裸地のある草原では、1種類もない場合、すなわち0種類の枠も出現することもある。このような種類数を、小学校の級長選挙の開票のときのように、植物がない枠数が2、1種類だけ出現した枠数が5、3種類が出現した枠数が7…というような度数分布を作っていく。「この度数分布は、何らかの法則にしたがっていないか?」、「その法則は数式で表わせないか?」。これが、私たちの考えていた問題である。時々思い出しては、「死ぬまでに解けるかな」とたがいに言いあいながら、データや式をいじっていたが、いつも回答にたどりつかないまま先送りにしてきた。
2012年の暮に、私はまたこの問題を考え始めた。ある夜、床についてからずっとこの問題を考えていると、以外な発想が起こった。「起きて、ノートに書きつけておこうか、どうしようか」と迷ったけれども、どうせ碌な考えではないだろうと、そのまま眠ってしまった。翌朝、昨夜の着想を思い出せたので、コンピュータに向かって計算してみると、どうも正しい発想らしい。それからは、正月の間ずっと、いろいろのデータによる例題を計算してみるたが、すべてデータは考えている数式に合致することが分かった。この数式は、ある程度理論的である。すなわち、生物の集団構造が、この数式であるていど理論的に組み立てられている。私は相当興奮していた。そしてその興奮は3月ごろまで続き、大学や東京でのセミナーでも話したけれども、深く関心を持つ仲間はいなかった。それで、周りの人には「新しいことを、見つけたかも知れないよ」と言うだけにした。3月に開かれた生態学や草地学の発表会では、話の道筋を少し外れて、ちょっとだけこの発見を付け加えて話した。おそらく皆は何を話しているのかよく理解できなかったのではないかと思う。
2013年1月8日に、スロバキアにいるの私の友人からemailがきた。「スロバキアでは、チェコやハンガリーなどの近隣の国から草地生態学者が集まって、シンポジウムを開くので来ないか」という誘いであった。私は時間と旅費のことを考えて、出席できないと返事したが、そのとき、「もし論文だけの提出が許されるなら、そうしたい」と添え書きした。そういうことで、種数の頻度分布のデータと数式は、見つけてから数か月で3月8日に日の目を見ることになった。日の目を見たと言っても、おそらく参加者の興味を引きはしなかっただろう。ただ、広く世界中にインターネットで流されただけである。
この問題、自分たちのグループは関心を持っているが、実学には何の役にも立たないだ
ろう。私たちは、草原では、植物の集まりがどのようにして構成されているかを、明らかにできるきっかけになると考えているけれども。論文名は次の通り。(8/27/13)
Chen, J., N. Gáborčík, M. Shiyomi (2013) Frequency distribution model of species number in grassland communities. Proceedings of 8th Conference of Grassland Ecology. Grassland and Mountain Agricultural Research Institute, Banská Bystrica, Slovakia. pp. 47–52. (第8回草地生態会議報告書47–52頁:草地群集における種数の頻度分布モデル)

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