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額済納(エジナ)の草原1    塩見 正衛

2011/10/06 3:48 に 山口文夫 が投稿   [ 2011/10/06 3:49 に更新しました ]
 茨城大学の資金で、私は中国内蒙古の極乾燥地に草原調査に行くことになった。内蒙古で最も乾燥している西部地域、モンゴル国南側のゴビ砂漠の南部にあたる。この地域のはるか南側には標高5000mを超える祁連(キレン)山脈が東西に屏風のように連なっている。額済納の緯度は、津軽海峡くらいに位置している。一年間の降水量は50mm以下、潜在蒸発量(十分水があるときの蒸発量)が2000mmから3000mmであるから、極乾燥地と考えていい。それでも、祁連山脈の氷河から流れる黒河の水を使って農業が盛んに行われていた。明朝時代には水田もあったと聞く。現在は、農業や住民、近くに建設された宇宙基地の技術者や軍隊へ大量の水の供給を行っているから、黒河は途中で枯れていると聞いていた。
中国内蒙古にはこれまで、調査や見学に数えきれないほど訪問したけれども、いつも私が行った所は、生産量を誇る豊な草原であった。家畜と一緒に人々が悠々と生活をしている、モンゴル民謡のあの美しい世界であった。
 今回の内蒙古への旅では、そのような豊かで美しい草原ではなく、もっと厳しい自然条件におかれている砂漠や荒漠地の草原を希望していた。私たちが所属している茨城大学理学部で博士号をとった陳俊さんは、3年前西安市近くの農業大学で教授になった。彼女には、以前からこのような荒々しい自然の中の草原を一度でいいから見たいと話していた。今回は、彼女がその願望をかなえてくれたのである。
2011年7月26日夕方、茨城大学からの私たち3人と陳さん、陳さんの2人の修士女子学生、それに今年大学を卒業したばかりの陳さんの長女の計7名は、呼和浩特(フフホト)発額済納(エジナ)行きの夜行列車に乗った。空調がよくきいた寝台列車の旅は快適だった。朝目が覚めると私たちはもう砂漠の真中を走っていた。たいていは岩石が積もった荒漠砂漠で、植物の陰もほとんど見られず、人々が生活している様子は全く見られない。突然、ラクダの群れが駈けて行くのが見えた。私たちは、「あれはきっと野生のラクダだろう」と話しあった。そうして14時間後、私たちが目指す終点額済納駅に到着した。陳さんが出た大学の同級生、李艶春女史とお手伝いの人たちが私たちを駅に出迎えてくれていた。私たち日本人は中国語ができないので、これから先はすべて陳さんに通訳を煩わさなければならない。ホテルに荷物をおくと、李さんは私たちを近くのレストランに連れて行き、遅い昼食に招待してくれた。出された料理には早速ラクダの肉炒めがあった。あっさりした味の赤肉であった。
 
 
   写真1 車窓から見た砂漠   写真2 終着の額済納(エジナ)駅


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