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孤独なホモ・サピエンス

2010/04/05 2:05 に 山口文夫 が投稿   [ 2010/04/05 21:53 に更新しました ]

 地球上に70億人とも言われる現生人類は『動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・サル目(霊長目)・真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト属・ヒト種』に属する。人類は700万年前にチンパンジーの祖先と枝分かれし、「猿人」「原人」「古人」たちの中から地球上で唯一の「ヒト種」が残った。「ヒト種」の学名はHomo sapiens」(ホモ・サピエンス)という。「知恵のある人」の意味だそうである。人類愛とは程遠い殺伐たる現代社会は、いまこそ、滅亡していった「原人」「古人」に学ぶべきである。

 次の文は2010326日付毎日新聞の余禄欄に載ったものである。図は放送大学の印刷教材「生物界の変遷(page161)」から採った。

 ケニアで見つかった170万年前の古人類ホモ・エレクトスの骨は病気で歩けなくなってから数ヶ月は生きていたことがうかがえた。肉食獣のいるサバンナでだ。仲間が守って介護していたとしか考えられない。

 ほんの2万何千年前まで生存したネアンデルタール人では右腕と左目が生まれつき不自由で40歳くらいまで生きた個体の骨が見つかっている。ネアンデルタール人には体の不自由な仲間をいたわり世話をするのが普通だったらしい。(河合信和著「人類進化99の謎」文春新書)

 われら現世人類以外の古人類も病人や老人をいたわり、世話をした証拠がいくつか見つかっている。そう聞けば同じ「人類」としての共感がわき、その苦難や運命が頭をよぎる。だが古人類はすべて約12000年前のホモ・フロレシエンシスの絶滅を最後に地上から姿を消した。

 そんな古人類の一種がロシア・シベリア南部で3万~48000年前に生存していたことがわかった。洞窟から出土した小指の骨が、DNA分析によって現生人類の祖先と約100万年前に枝分かれした未知の人類のものと判明したのだ。

 ドイツなどの国際研究チームが明らかにしたもので、洞窟の名からこの未知の人類はデニソワ人と名づけられた。ちなみに今の人類とネアンデルタール人が枝分かれしたのは47万年前だという。デニソワ人はネアンデルタール人ら他の古人類や現世人類と同時代に共存したのだ。

 デニソワ人の姿や生活をうかがわせるものは何もない。ただ他のすべての優しい人類種の滅んだ後、たちまち地球上を覆い尽くす繁栄を手にしたわれらホモ・サピエンスの孤独に思いが至る。
 
(注)ホモ・フロレシエンシス:インドネシアのフローレス島に1万数年前まで実在した。成人女性の身長は110cm位と小さい。脳の容積も400mlとホモ・サピエンス(1350ml)に比べて極端に小さいがホモ・サピエンスと同レベルの精巧な石器を作っていた。知的レベルは相当に高いことが想像される。(山口)
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