独力で目的に向かっている人は大好きだ!

投稿日: 2010/01/13 0:14:09

スワーダ・アル・ムダファーラ(教育者)

Suad Mohammed Al-Mudhaffar

2008年国際的統一試験で300点満点で300点を獲得した女生徒が世界一になった。

良い点数を取ったのは彼女ばかりではなく、上位10%以内に多くの生徒が入っている。

(右の画像はここからリンク

オマーン人が慕う名物校長─アラブ諸国では女性は家庭に閉じ込められ、虐げられている─

アラビア半島南東端のオマーンで学校を経営するスワーダ・アル・ムダファーラ(旧日本名・森田美保子)を見れば、そんな誤ったステレオタイプは吹き飛ぶはずだ。

スワーダは90年、幼稚園児から高校生まで500人が学ぶアザン・ビン・ケイス私立学校(ABQ)を首都マスカットに設立。不可能を可能にする行動力と情熱的な語り口で、人口260万人のオマーンでは誰もが知る名物校長だ。

急速な近代化に合わせて学校制度を整えたため、暗記中心にならざるをえなかったオマーンの教育界に、彼女は独自の方針*で新風を吹き込む。たとえば、アラビア語と英語のバイリンガル教育。ABQの生徒はAレベルという国際的な大学入学資格を受験し、大半が外国の大学に進学。コンピュータや会計の国際資格にも挑戦する。*日本流の教育=挨拶、礼節、体育など。

教育省の学力評価では、全国でトップ3にランクイン。当初はスワーダの方針を認めなかった教育省も、今ではバイリンガル教育や国際資格の取得を推奨している。

もっとも、300ある私立校のなかでABQが抜群の人気を誇るのは、高い学力のためだけではない。毎朝、500人の生徒全員と握手し、声をかけるスワーダに子供たちは絶大な信頼を寄せる。校長室には、常に生徒が出入りして相談をもちかける。

「子供の心に徹底的に寄り添うのが私の役割。わかってもらえると感じれば、どんな子も無限に伸びる」。実際、ABQではダウン症や自閉症の子も積極的に受け入れ、なかには大学に進むケースもある。

12億円の新校舎も完成。

東京で生まれ育ち、カルチャーセンターを主宰していた20代のシングルマザーが、初めてオマーンを訪れたのは79年。日本文化を紹介する使節団に参加し、その後も現地の婦人会に招かれて渡航を重ねる。やがて、オマーン人男性と再婚。イスラム教に改宗し、戸籍名もオマーン式に改めて、メードつきの裕福な生活が始まった。

だが「幸せすぎてばかになりそう」な日々を送るうち、もち前のチャレンジ精神が頭をもたげる。日本で良質の教育を受けた自分にできるのは教育だ。障害児を支援するボランティアに取り組んだ時期もあったが、善意だけでは活動は続かないと痛感し、学校づくりへの思いがますます強まった。

もちろん外国人が学校をつくるなど前代未聞。それでもギフトショップを開いて資金づくりに励み、小学校に入ってアラビア語を勉強しながら10年越しの夢を温めた。ようやく開校許可を得たABQも、初年度に集まったのは幼稚園児5人のみ。それが今は、12億円の新校舎を建てるまでに成長した。

数年前に4度目の結婚をしたスワーダは、女性のロールモデルとしても知られる存在だ。人生相談に来る女性には、離婚女性を手厚く保護する法律について説明し、再出発を後押しする。「できることから一歩ずつ始めれば、開かない扉はない。チャレンジし続けることが、魅力的な人間でいる秘訣」

そして今も、次のチャレンジに向けて準備を進めている。不登校児が通いたくなるような学校を日本につくるという夢だ。スワーダの行動力と情熱があれば、きっとユニークな学校が生まれるだろう。

人にはそれぞれ価値あるプロファイルが年齢とともに増してくる。しかし時には自分の歴史を白紙の上に戻したいようなときもある。

それぞれの道のりは今日の私を造り上げている。自分をふりかえり 今 子供達のために働ける…そんな私に幸せを感じている。

(河本紀久雄)

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河本様から寄稿をいただきましたので、葛貫が代行して掲載(2010/1/13受)。